● 今回の先生 川瀬 三代 さん
栄養士として40 年働く
退職後は畑仕事を趣味とし、野菜・料理・手芸と常に何かを作っている創作力溢れる人
好物/パン
● テキスト・イラスト 川瀬 知代
個展など発表の他、アパレルや書籍などにて絵を描く
「粒粒」の名で食にまつわる活動を行う
2020年末に故郷いなべに拠点を移す
はじめまして。
今回から始まりました「eat 紡ぎ」は、「糸紡ぎ」のようにいなべで生活されてる皆さまの、ご家庭に受け継がれている味・お料理などを教えて頂き、私なりに解釈し、皆さまにご紹介するという企画ページです。
私ごとですが、去年、東京から生まれ故郷の「いなべ」に戻ってきました。いなべを離れたのは10代、その頃は、このいなべの食の豊かさに何も気づいていませんでしたが、それから歳を重ね、自分の家族もでき、毎日食事をする中で、この豊かさがどれだけ幸福なものなのかが身に染みて解るようになりました。それらがなくなることなく若い世代にも繋げて広がっていけばと思っています。
第1回は、私のルーツである母にお願いしました。数ある母のお漬物レパートリーの中から重鎮であり別格の存在感(独特の香り)を放つ「たくあんのひね漬け」を伝授してもらいました。
「ひね漬け」とは、通常より2〜3年長く漬けた状態のたくあんのことで、漬け方はたくあんと同じです。残念ながら今は漬ける時期ではないので、今回は母の漬け方を教わり、すでに漬けて出来上がったものをいただいてみました。(今年は私も漬けようと思います!)
たくあん漬け用大根を12月に収穫し、葉付きのまま洗って2週間以上干しておくと大根がクルンと丸まってきます。ヒゲと葉を切り落とし、材料と共に順に桶にビッシリ重ね詰めていき、重しをドン。ひと夏置いて秋以降に食べることができるそうですが、ひね漬けは後1〜2年そのまま漬けておきます。3年ものは、ひと口かじれば、じわーっと年月が滲み出てくるような熟成された旨味としょっぱさと独特の甘さがありとにかく濃い!たくあん1年ものすらフレッシュに思えるほど、ひね漬けは、ぎゅーっと詰まった味がします。
我家の法事では、皆さんに食事をしてもらう際に数種の漬物の鉢が並びます。たくあんだけでも何種類も。切り方も変えて、輪切り・拍子切り・みじん切りにしてゴマと混ぜたもの。人によって好みはあるかと思いますが切り方が違うと味も変わります。白米と食べるとお米の甘さがより感じられます。お酒のつまみに拍子切りをポリポリと食べ、また〆のご飯でみじん切りとなんて流れもあったり、、、。「コレが好きなんやわ〜」と帰りにお土産(袋二重)に持って帰ってもらうのがお決まりです。
たしかにスーパーやお店では甘い黄色のたくあんは売ってますがアレはアレ。全くの別モノです。この味はたくあんを漬けている家にしかないのです。(お家によって味も多少違うでしょう)しかし、今はたくあんを漬けるご家庭も少なくなったので、「ひね漬け」は幻の1品となりつつあるのかも知れません。
日常、食卓に並ぶ器やタッパーの中で、ひね漬けの入れ物のフタは常に閉められています。欲しい人が食べる時だけ開けてパッと取ってサッと閉めたり。やっぱり臭いなぁと言われながらもコレがあるとご飯が余計に入ってくわぁ♡と箸が進んだり。臭いからこそ癖になる。やめられない味。
暑い夏、食欲のない時には冷たいおそうめんに、ひね漬けのみじん切りと薬味をたくさんかけて食べるというアレンジもいいかもです!漬けておけば、いつでも出して食べられる(蓋はされますが)究極の常備菜とも言っても過言ではないのではないでしょうか。
愛されてやまないひね漬けなのでした。
【 募 集 】
『eat紡ぎ』では、いなべで暮らす皆さまの、ご家庭に受け継がれている味・お料理などを教えてくださる方を常時募集しています。
(例)ご飯のお供(おかず、お漬物、汁物)、甘味(和菓子、洋菓子)、調味料(お味噌、醤油)、お節の一品、生産者さんだからこそ知る美味しい野菜の食べ方…など
■ 応募先
① メール info@inabe-gci.jp
② 郵送または持ち込み(持ち込みの場合の受付時間:平日9:00-17:00)
〒511-0428 いなべ市北勢町阿下喜31番地 いなべ市役所 2階 グリーンクリエイティブいなべ事務局
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