髭がチャームポイントの潜道竜馬さんは、ふたりの子を持つ優しい父でもある、いなべ市地域おこし協力隊のひとりだ。
潜道さんは、いなべ市藤原町の北端にある「鼎(かなえ)」地区の活性化をミッションとした活動に取組み、今春2年目を迎える。
今回は、そんな潜道さんに、豊かな自然溢れる鼎での活動について、話を伺った。
三重県の旧久居市(現津市)出身で、自然が近い環境で育ったこともあり、オーガニックなものや土いじりに興味を持った潜道さん。
これまで、農業や自然食品の販売等を生業としてきたが、更にブラッシュアップさせたいという思いから、「workaway」という制度を活用して、家族でヨーロッパを訪れた。
2016年1月から約1年かけて、ヨーロッパのエコビレッジやオーガニックファームでその地の農法を学び、その間に訪れた国は14カ国以上にもおよぶ。
当時、子どもを連れてヨーロッパを周遊する中で、日本に帰国した際は子どものためにも、より自然に近い環境で暮らしたいと考えていた。
ヨーロッパで学んだ知識、自身の生業、自然の中での子育て。
この3つを叶えるために行きついた先が「地域おこし協力隊」だ。
元々、地域おこし協力隊の制度は知っていて、農山村の活性化にも興味があったと話す。
鼎地区を選んだ決め手は、「珍しい漢字に惹かれたから」。はにかみながら話す理由は、どこまでもシンプルだ。
「一体何が地域おこしなのか」「地域から何を必要とされているのか」
協力隊になった当初は、地域行事に率先して参加し、住民とのコミュニケーションを積極的にとるなど、「鼎を知ること」からスタートしたという。
ヨーロッパでの経験や子育て、そして、鼎地区が求めることをリンクさせ、自身が「やってみたいこと」と上手く繋げていけるような活動を目指す。
潜道さんが立つ「○鼎家(かなえはうす)」は、2017年に当時空き家だった民家を改修し、地域の活動拠点としてオープンした。
この場所を、地域の人と一緒になって潜道さんも管理する。
鼎家の前に付く「○」は、「訪れる人の想いや、願いが入るように」という意味を込めて付けられている。
○鼎家の前の坂を少し登ると、そこには約2ヘクタールの茶畑が広がる。
数年手つかずの状態だったこの茶畑に、潜道さんは目を付けた。
大安町石榑(いしぐれ)で、お茶生業を営む「マル信 緑香園」の代表 伊藤典明さんにアドバイスをもらい、今春から茶畑再生の取組みを本格的に始動する。
お茶の葉は、鼎で懸念される獣害も少なく、虫などによるリスクもほぼ無いといわれている。
更に三重県はお茶が育つのにとても良い環境であることから、潜道さんのこだわりもあり、無農薬で化学肥料を一切使わない有機栽培で、自然に育ったお茶づくりにチャレンジする。
鼎地区の特産品にしていきたいと話す潜道さんの夢は、目の前一面に広がるお茶畑のように大きい。
そんな潜道さんは、農業だけでなく、地区との関わり合いを活かした企画も○鼎家で行う。
そのひとつが、「古いものを価値あるものに」を軸にした「古道具市」だ。
地域の人とコミュニケーションをとるうちに、各家や空き家に昔ながらの道具や、古い日用品があることが分かってきた。
「空き家も、空き家にあるモノも、大切な資源だから」という潜道さんの声掛で、
地域の人が「これもどうや〜、あれもどうや〜」と○鼎家に、たくさんの古き良きものを持ち寄った。
顔を揃えた古道具たちは、地域の宝物といって良い程。今後は規模拡大を目指し、古道具に関しての勉強も行う。
自身の考えた企画を定期的に行うことが、長い目で見た時に、「鼎で実施することの意味」になり、地域の人にもそう感じてもらえたら嬉しいと話す。
いなべ市に移住し、家族で暮らす中で、鼎地区の人々との結びつきの強さも勿論だが、移住者同士のコミュティや繋がりもまた、子育てのうえで心強い!と話す潜道さん。
「いなべ市は、都会でもなければ田舎でもない、どちらの良さも合わせ持つ場所。都会と比べると豊かな自然があり、程良い田舎暮らしにはぴったり」と、この地で住む魅力を語ってくれた。
グローバルな視点を持つ潜道さんだからこその気付きがたくさんある。
鼎地区での今後の活動に注目が集まる。
【Credit】
〈取材撮影ご協力〉
いなべ市地域おこし協力隊
グリーン・ツーリズムの推進(鼎地区)
潜道 竜馬さん
〈撮影〉
高橋博正写真事務所/山の上スタジオ
高橋 博正
〈インタビュア〉
いなべ市役所 企画部 政策課