「野菜を通して、季節の移ろいや大地の恵み、自然の循環を感じてもらいたい」
そんな目標を掲げ、いなべで農業を営む人たちがいる。
それが川﨑 亮太さん、麻里さんだ。
市外から移住してきた二人は、大安町石榑で有機農法による野菜作りをおこなっている。
(写真:左 川﨑 麻里さん、右 川﨑 亮太さん)
亮太さんが農業を始めたのは、青年海外協力隊でエチオピアに渡ったことがきっかけだ。
そこで体育教師をしながら、現地の自然とそこで生きる人々の暮らしを目の当たりにした。
その経験から、もっと農業について勉強したいと感じた亮太さんは、ニュージーランドのファームステイ先で、
暮らしとともにある農業を体験したのち、農業研修を経て本格的な就農の道へと進むこととなった。
麻里さんは、農学部を卒業後、同じく青年海外協力隊として、ウガンダ農村部での野菜栽培の普及活動に携わった。
帰国後に就職した農業系の会社のつながりで亮太さんと出会い、意気投合し、のちに結婚。
その後は、自分たちの理想とする農業ができる場所を捜し求め、いなべの地にたどり着いた。
しかし、いなべに移住した当初は畑を探すのにも一苦労。
市内の土地を何箇所も訪問した。
一方、土地探しをするなかで地元の人と話す機会が得られ、それが地域との関係づくりにつながったそうだ。
「移住して、いなべは住みやすいまちだと感じました。住んでいる人も穏やかでいい人ばっかり。
地域の人もどんどん話しかけてくれて、年齢が離れていても話が合うんです。自然がもっと身近だった頃の昔話を聞くのが、とても新鮮でした」
そうした地元とのつながりを通して、自らの畑を見つけ、2018年3月に「HATAKEYA」を開業した。
現在、畑の面積は1.5ヘクタール。
見渡してみると、いなべの風土に育まれた畑一面に二人が手がける野菜が広がっていた。
二人の農業には明確な軸がある。
それは「自然」だ。
「有機という概念にこだわりはありません。ただ「自然」を軸に、自分たちの感覚を研ぎ澄ましながらも、科学的に農業を考えていきたいと思っています」
そうした大きなコンセプトのもと、野菜と向き合う姿勢がとても印象的だった。
作業場に入ってみると、収穫されたきゅうり、生姜、さつまいもといった野菜がたくさん。
一つ一つ重さを計りながら、従業員の方と一緒に袋詰めをしていく。
袋詰めされた野菜たちは、員弁町の農産物直売所「ふれあいの駅 うりぼう」を中心に出荷され、最近では県外にも販売を
展開しているそうだ。
試行錯誤を繰り返していくなかで、野菜の質や作業効率に手ごたえを感じているという二人。
さらなる事業展開を含め、経験を重ねながら少しづつステップアップを目指している。
「自然から感じ、学ぶことが毎日たくさんあります。野菜を通して、旬の美味しさや季節の移ろいを感じてもらえたら、
食べた人の暮らしがさらに豊かになるんじゃないかと思うんです。少しでも自然に興味を持つきっかけになれればなと!」
そういきいきと語る二人は、きっとこれからいなべの新しい農業を切り開いていくことだろう。
【Credit】
〈撮影場所〉
いなべ市大安町石榑
〈取材撮影ご協力〉
HATAKEYA 川﨑 亮太さん、麻里さん
〈撮影・取材〉
いなべ市役所 企画部 政策課