いなべ市で永年建具職人として、組子細工を主とする衝立(ついたて)や木工芸品を制作している、木村修さん。
全国建具組合連合会が主催する展示会では、幾度も最優秀賞を受賞するほどの腕前だ。
今年米寿を迎えた木村さんは、中学校を卒業後、建具屋を営んでいた実父の跡継ぎになることを決意し、
学生だった頃も含めて今日までいなべで76年、二代目として現役で仕事を続けている。
北勢町阿下喜の一角に工房を構え、隣接した建物に自身の作品を展示し、「いなべまちかど博物館」として一般開放している。
「仕事の無い日でも、毎日木や道具を触らないと感覚が鈍る」と話す木村さんは、一日数時間、必ずこの工房で一人作業をするそうだ。
木の色彩や木目、それぞれ木が持つ特徴を最大限に活かした木村さんの木工芸品は、繊細で造形美にあふれている。
その中でも、杉の木を使用したオリジナルのお盆が若者から大人気で、工房と同地区にある飲食店、
上木食堂や桐林館喫茶室のオーナーたちが、料理を提供する際に使用している。
縁起の良い八角のデザインと、木の色彩と木目に魅了され、木村さんのお盆目当てに、
工房の近くにある販売店 岩田商店には、市内外からたくさんの人が訪れる。
(写真上:上木食堂ランチ)
ひとつのお盆を制作するにあたって、なるべく一枚の板から全てのパーツを削り出す。そうすることで、木目が揃い、より美しく見えるとのこと。
釘は一切使わず、削り出したパーツを素早く組み立て、磨いていく。仕上げに表裏の縁を丸く丁寧に削り、完成だ。
木村さんは、地元で開催される展示会や、ワークショップなどにも積極的に参加し、若い世代との交流も欠かさない。
組子細工の技法を用いて、コースターや花台を制作する木工教室は、人気でオファーが絶えないそうだ。
削り出した際に出る端材で、子どもたちに遊んでもらえる木工作品を考えるのもまた、最近の楽しみとのこと。
旅行やゴルフが大好きと話す木村さんの人柄は、温和でユニーク。工房には、若者からお年寄りまで、地元の人々が日々集い、
何気ない会話に笑顔の花を咲かせる。
今後の目標を問うと、「生涯現役!この一言に限る」と声高らかに教えてくれた。
【Credit】
〈取材撮影ご協力〉
木村修さん
〈撮影〉
ウラタタカヒデ (鈴麓寫眞)
〈取材〉
企画部政策課