「俺たちのまちは、俺たちが守る」
いなべ市藤原町鼎地区の住民で平成元年に結成された、「平成会」。
その男性メンバーが中心となって4年前に始めた防犯パトロールは、今も毎月欠かさず行なわれている。しかし、守っているのは地域の安全だけではない。
時の流れと共に若者は外へ出てゆき、子どもの声が聞こえることも少なくなった。
何とか地域を盛り上げたい、楽しくしていきたいという意志のもと、平成会は発足した。
「下を向いてなんていられない。前を向いていきたい」とメンバーの1人である伊藤憲明さんは話す。
平成会は、現在男性20名、女性12名で構成されており、今では敬老会や地元のお祭りなどの地域行事も任されている。
元は農業倉庫として使用していた場所が、平成会の活動拠点となっており、防犯パトロールの後に、そこで懇親会を開くのが恒例だ。
平成会の懇親会は、遊び心に溢れている。
この日も皆が食材を持ち寄り、笑顔でバーベキューコンロを囲んでいた。
「次はあれを焼こう」「これうまいな」「焼きすぎだよ」とはしゃぐ姿は、まるで少年たちそのものだ。
「あじと」
誰が名付けた訳でもないが、「山賊のようでカッコイイから」と、いつしかそれが愛称となった。
メンバーの1人、高橋満雄さんが持ち込んだ見慣れない道具が目に付く。
鉄工所に勤務している高橋さんが仕事の合間を縫って作った通称「満雄プレス」だ。
食材を挟んだ時の鉄板の隙間はわずか0.6㎜。
精巧なつくりはまさにプロの仕事で、「本気の遊び心」が垣間見える。ここではそれが、たまらなく刺激的なのだ。
小麦粉で生地を作り、その中に魚介類、肉類、餅など様々な食材を入れて挟む。
勢いよく水蒸気が出てくると、全員が満雄プレスに顔を寄せ、目を輝かせながら開く瞬間を今か今かと待っている。
その一連の工程はあまりにも豪快で、愛称のきっかけとなった山賊さながらといったところだろうか。
大人たちが屈託なく、笑い合いながら、自分たちのまちの未来を真剣に考える。
あじとは、平成会にとって大切な情報共有の場所だ。
地域の繋がりが希薄になりつつある現代において、鼎地区の人々の結束は固い。
これからも平成会は鼎の未来を守るために、あじとに集う。
【Credit】
〈取材撮影ご協力〉
平成会 男性メンバー
伊藤 憲朗さん
伊藤 誠さん
伊藤 正光さん
伊藤 晃司さん
太田 卓美さん
杉村 春之さん
高橋 満雄さん
西脇 一也さん
〈撮影〉
高橋博正写真事務所/山の上スタジオ
高橋 博正
〈インタビュア〉
いなべ市役所 企画部 政策課